参考ミネラル

バナジウム
バナジウムは地殻の表層部には重量比で0.015%程度存在し、23番目に多い元素です。バナジウムは銀白色の金属で、バナジウム合金、バナジウム鋼などの合金鉄の原料に使われています。金属バナジウムやバナジウム合金は電子材料、被覆材、耐熱材、超合金、航空機の部材などに使用されています。

バナジウムは、必須性は認められてはいませんが、生体内で糖質や脂質代謝などに対して有用な作用があると考えられています。バナジウムは、海藻類、乳製品、野菜に多く含まれていて、飲み水からも摂取されます。
ヒトの食品からのバナジウム摂取量は、10~60µgで、人体中には約200µgのバナジウムが存在すると見積もられています。吸収されたバナジウムは、骨、血液、肝臓、腎臓、脾臓などに分布するといわれています。 多数の研究から、バナジウムはインスリン作用に影響を与え、さらにインスリン類似作用を持ち、あるいはグルコース-6-リン酸ホスファターゼの活性化に影響をするなどから、グルコース代謝に関連することが示されています。 バナジウムは脂肪細胞でグルコースの酸化や輸送を、また、肝臓などでグリコーゲンの合成を促進していると考えられています。一方、バナジウムによるコレステロール合成の阻害がヒトや動物の研究で観察され、血漿中のリン脂質やコレステロールレベルが減少するといわれています。欠乏などによる健康への影響などは報告されておりませんが、過剰摂取についてはその毒性が報告されています。
富士山の伏流水にバナジウムが多く含まれているといわれています。
経口摂取されたバナジウムは、およそ2%が消化管から吸収され、腎臓から尿中に排泄され、残りは糞便中に排泄されるといわれています。
コバルト
コバルトは、強い磁性をもつ灰白色の金属で、主に銅やニッケルといった他の金属の副産物として生産されます。コバルトの化合物には炭酸コバルト、酸化コバルト、塩化コバルトなどがあり、リチウムイオン二次電池に用いられています。その他、合金材料として幅広い用途で使われており、ニッケル、モリブデン、クロム、鉄などとの合金は、超硬合金工具として切削工具、耐磨工具に利用されたり、特殊鋼部品として工作機器部品や航空機エンジン部品などに利用されています。
炭酸コバルトは、永久磁石やVTRテープなどの磁性材料に、酸化コバルトは、磁器の染付に用いられている藍色の顔料(呉須)の主な成分であるといわれています。コバルトは、必須栄養素であるビタミンB12の構成成分で細胞の分化と増殖、中枢神経の保持などに関与しています。

コバルトは、ビタミンB12の必須構成成分といわれています。そのビタミンB12は、哺乳動物では唯一反芻動物の胃の中でそこに存在する微生物の働きによって合成されると考えられています。ヒトにはその合成システムが無いので摂取食物中からの吸収により補われています。なお、ヒトの生体内でコバルトまたはコバルトイオンが単独で負っている機能などについての報告はないといわれています。 成人が食事から摂取するコバルト量は1日5~45μgと考えられていますが、酸化コバルトの投与研究などではコバルトの吸収が低く、血清や尿ともに有意なコバルト濃度の上昇を示さなかったと報告されています。
日常生活においてコバルトの欠乏は報告がありませんが、特殊な環境下でコバルトが過剰に人体内に進入した場合の毒性についての報告があり、例えば、陶器産業で絵付け作業に従事している作業者が染付に用いているコバルトブルーによるコバルト曝露呼吸器系の障害を受けている事例があるといわれています。 コバルトの経口的な摂取に関連して、1日の所要量及び許容上限量について報告はありませんが、コバルトは食品からの摂取が大半で、その推定摂取量は1日あたり5~40µgであると報告されています。 コバルトと密接に関連しているビタミンB12については、これを多く含む食品、「あさり」、「しじみ」、「牡蠣」、「蟹」、「さんま」などの魚介類に配慮した食生活を送る必要があるといわれています。
経口摂取されたコバルトは、消化管で吸収され、必要量がビタミンB12として主に肝臓に貯蔵されます。それ以外は腎臓から尿中に排泄されるといわれています。
ニッケル
ニッケルは、銀白色で、腐食しにくく、展延性に富む金属で、ステンレスやニッケル鋼の原料に使われるほか、耐熱鋼、磁石鋼、耐酸合金など様々な合金の製造に使われたり、ニッケル・カドミウム電池の電極や触媒などに使われています。また、純粋な金属ニッケルは、硬貨、家具や実験器具などの製造及びメッキに使われています。ニッケルは、地殻中、水中に広く分布しています。
ニッケルカルボニルという揮発性の有機ニッケル化合物はニッケル精錬の中間産物で、毒性が高いといわれています。そのため大気中の有害性について規制が設定されています。

ニッケルの体内量は、成人で5mg前後といわれており、その分布は骨に最も多く、次いで、肺、皮膚、腎臓、肝臓の順で、臓器特異性などは認められないといわれています。 血中ニッケルの大部分はα1-マイクログロブリンなどのタンパク質と強固に結合しており、これらは交換不可能でニッケルを利用するためにはタンパク質を分解する必要があります。また、少量のニッケルは、血清アルブミンやアミノ酸とも結合していてこの場合は、容易に解離すると考えられています。
ニッケルは、微生物や植物中のウレアーゼやある種のデヒドロゲナーゼなど酵素の構成成分で、下等生物において嫌気性下で利用されます。ニッケルの生理機能としては、RNAの安定化、鉄の吸収促進、各種酵素の活性化、ホルモン作用に関与、色素代謝促進、グルカゴンの分泌亢進などが報告されています。 ヒトにおけるニッケルの必要量は、約100µg程度で、日常生活の中で食品などから、約300µg程度のニッケルを摂取していると考えられています。ニッケルを大量に含有している食品が特にあるわけでは無いので、中毒を起こす際は、ニッケル汚染食品が原因であると考えられています。動物においてニッケル塩の大量経口投与、胃腸などの消化器系を刺激して、嘔吐や下痢を起こしますが、金属ニッケルは比較的無害といわれています。しかし、ニッケルカルボニルなどの有機ニッケル化合物はヒトに全身性の中毒を起こすといわれています。
経口摂取されたニッケルは、ほとんど吸収されずに1~5%が消化管から吸収されるといわれています。吸収後は血清中のアルブミンと結合して体内に分布しますが、食事から摂取される量では体内に蓄積することは少ないといわれています。糞便及び尿から排泄されます。
ゲルマニウム
ゲルマニウムは、半導体性質を有する元素で、シリコンが登場するまでトランジスタに用いられていました。現在でも、電圧降下が小さいという特徴を生かしてダイオードやバンドギャップが比較的狭いことから光検出器などに用いられています。ゲルマニウムの化学的性質はケイ素と類似していて、過剰に吸収すると植物や動物に有害であるといわれています。
ゲルマニウムは構成成分に炭素を含まない無機ゲルマニウム化合物と炭素を含む有機ゲルマニウム化合物に分類されます。

ゲルマニウムが人体に必要かどうかは不明で、摂取不足による影響なども報告されておりません。普段の生活のなかで、食品を起源とするわずかなゲルマニウムを摂取しているといわれています。
健康食品による過剰摂取が健康障害を引き起こしたとの報告があり、1988年に厚生省が下記の局長通達を発行しました。

「ゲルマニウムを含有させた食品の取扱いについて」


  1. 医療関係者、食品関係事業者、摂取者などに以下の事項について注意を喚起すること。
    1. 酸化ゲルマニウムを含有させた食品の摂取と、同食品を継続的に摂取した者に散見させる人の健康障害との間には、臨床的データから強い因果関係があることが認められ、また、動物実験においても、酸化ゲルマニウムを継続的に投与することにより人と同様の健康障害が発生することが認められるため、酸化ゲルマニウムを含有させた食品を継続的に摂取することは避けること。
    2. 酸化ゲルマニウムについては、動物実験において予め腎臓機能障害を起こしておいた動物に酸化ゲルマニウムを投与した場合、腎臓機能障害が悪化するとのデータがあり、特に注意を要すること。
  2. 食品関係事業者に対しては、ゲルマニウムを食品の原材料として使用する場合は、予めその長期健康影響など安全性を確認して使用するように指導すること。

と通知されていて、使用禁止はされていない状況となっています。ゲルマニウムの最少有害作用量(LOAEL)は、1日あたり1~4mgGe/kg体重で、1日当たり4mg/kg体重以上を摂取した7例のうち4例が亡くなっていると報告されています。
経口摂取された無機ゲルマニウム化合物は、吸収されやすく、全身に広く分布し、脾臓に蓄積され、その後腎臓から尿中に排泄されます。有機ゲルマニウム化合物の体内動態については詳細は不明といわれています。

リチウム
リチウムは銀白色の柔らかい金属で、アルカリ金属に属します。化学的性質はアルカリ土類金属のマグネシウムなどに似ているといわれ、最も軽い金属です。リチウムは、陶磁器の釉薬、花火、合金、原子炉の制御棒、ミサイルや飛行機の燃料、触媒及び電池などに利用されています。有機化学の分野では還元剤として、生化学の分野では核酸や脂肪酸代謝に関与する酵素の補因子として用いられています。
リチウムは、酸化還元電位が低く、原子量が小さいため、電池電極に用いると起電力が高くエネルギー密度の大きな電池ができるといわれ、リチウム電池として広く用いられています。

1949年にリチウムの抗躁作用が発見され、現在リチウムは主として躁病や双極性うつ病の治療薬として用いられています。 リチウムを投与した際に様々な影響が報告されており、リチウムの有効量が中毒量に非常に近いため、血液中のリチウム濃度を測定しながら投与を行う必要があるといわれています。
リチウムは、地殻中に広く分布し、海水にも含まれているので、食物から摂取されます。リチウムの含有量が高い食品は小魚、貝類、海藻で日常的な食生活においてリチウムの欠乏などは認められないといわれています。一方、高濃度の摂取ではリチウム中毒が発生する場合があるといわれています。
経口摂取されたリチウムの吸収及び排泄はナトリウムの場合と似ているといわれ、消化管から吸収されて主に尿中に排泄されると考えられています。腎臓におけるリチウムの再吸収はナトリウムと競合するともいわれています。
ホウ素
ホウ素は、植物の成長にとって必要な微量元素の一つです。温泉水や海水中には比較的高い濃度で含まれています。ホウ素の用途としては、住宅用の断熱材やガラス強化プラスチック用のガラス繊維の原料が最も多く、その他液晶ディスプレイなどの特殊ガラスの製造や陶磁器のうわ薬などに使われます。これらのガラス、陶磁器に含まれるホウ素は溶け出すことはほとんどないので人が取込む量は僅かだといわれています。
動物体内でホウ素がどのような働きをしているのかが現在も明確になっておりませんが、酵素などの生体活性物質が行っている反応を修飾し、代謝調節を行っている可能性があるといわれています。

ホウ素は、こんぶ、わかめなどの海藻類に多く、一般に植物性食品に多い傾向があるといわれています。ホウ素及びその化合物の人での曝露事例としては、ほう酸及びほう砂を経口摂取した成人及び幼児で、「嘔吐」、「発疹」、「皮膚の紅斑」などが認められたとの報告があるといわれています。
動物体内でホウ素がどのような働きをしているのかは明確ではありませんが、健康なボランティアに1日に500mg以上のホウ酸を50日間摂取させたところ、「食欲不振」、「消化器障害」などの健康障害が発生したとの報告や、ゴキブリ駆除に用いるホウ酸団子の誤飲による健康障害などが報告されており、ホウ酸が有害な物質であると考えられるようになりました。 これらの研究から、ホウ素の成人の必要量は1日に1mg程度と推定されていますが、一方、アメリカで定められているホウ素の許容上限摂取量は、19歳以上の男女で1日に20mgといわれています。
経口的に摂取されたホウ素の90%程度が吸収され、吸収されたホウ素の約95%が数日中に尿から排泄されるといわれています。
臭素
臭素はハロゲン元素の1つです。通常は単体の臭素として取り出されていて非金属元素の中で室温で液体で存在するのは臭素のみといわれています。臭素は海水1L中に約65mg含まれており、それを塩素ガスで酸化置換して単体の臭素を製造しています。写真工業では、臭化銀(AgBr)が感光剤として用いられ、アイドルや映画スターの写真が、日本では「ブロマイド」と呼ばれていたのは臭化物(ブロマイド)に由来しているといわれています。臭素は、試薬、農薬(土壌及び植物の燻蒸剤、プラスチック、化学合成繊維の難燃剤及び工業製品に使用され、臭素化合物の臭化カリウムは、不安緊張状態の鎮静や小児の難治性てんかんの治療薬とし使用されています。

人体中の臭素は約200mg存在すると見積もられています。健常人の血清中の臭素濃度は、およそ5µg/mlといわれており食事や民間薬、強壮剤や鎮痛薬などを摂取することにより変動すると考えられています。 動物や植物における臭素の生理機能は不明で、一部の動物の研究で臭素が必須元素である塩素の代用となるといわれています。 臭素は植物に比較的多く含まれていますが、通常の生活で過剰に摂取されることは無いと考えられています。
臭素イオンを動物に長期間投与すると慢性中毒を生じ、皮膚や粘膜に発疹などを引き起すことが知られています。臭素イオン投与を中止して、塩化ナトリウムを与えると臭素の排泄が促進されたともいわれています。 臭素化合物のポリ臭化ジフェニルエーテルは、同じ臭素系難燃剤であるポリ臭化ビフェニルよりも毒性が低く電気製品や建材、繊維などに難燃剤として添加されていましたが、オゾン層の破壊や生物濃縮の可能性が示唆され、現在では使用が制限されています。
経口的に摂取された臭素は、消化管で速やかに吸収され、短時間各組織に滞留した後、尿中に排泄されるといわれています。
パーマ剤などに臭素酸塩として臭素が使用されている場合があります。




千載一遇健康倶楽部(株式会社アクセスマネジメント)
東京都品川区中延6-9-5 I.K.ビル4F
TEL:0120-831-083(受付時間/平日 AM9:30~PM6:00)
FAX:03-6421-5925(受付/24時間)


千載一遇健康倶楽部 Copyright (c) 2005 All Rights Reserved. 無断転載・転用・引用禁止